飲食店や加工食品業者の方、ホテルや旅館で食品を提供する企業、カフェやパン屋さんなど、食料品を取り扱う全ての業種の方にとって食中毒は大きなリスクの一つでしょう。
このページでは、食中毒に備える3つ保険(PL保険・利益保険・リコール保険)を紹介します。
食中毒はどのくらい発生しているのか?
厚生労働省の統計によると、平成30年の1年間で、食中毒は1,330件(患者:17,282人、死者:3人)報告されています。報告されていない案件もありますので、実際はこれ以上発生していると思われます。
食中毒に伴なう3つのリスク
食中毒事故を発生した場合には、以下の3つの問題が起こり得ます。
① お客様等に訴えられ、治療費などを損害賠償請求される
② 休業により売上が減少する
③ 既に市場に出回った商品を回収(リコール)する費用の発生
では、それぞれのリスクとそのリスクに対応する保険を紹介します。
① お客様等に訴えられ、治療費などを損害賠償請求される
事例
以下のような食中毒によって、被害者より訴えられた事案が存在します。
事件名: 学校給食(O157)死亡事件
原告: 死亡した女児の遺族
被告: 地方自治体
請求額: 7,770万円(認容額 4,537万円)
病原性大腸菌O157に汚染された学校給食を食べた結果、女児が死亡した。
事件名: 生ウニ食中毒事件
原告: 飲食店経営者、食材納入業者
被告: 食品輸入会社
請求額: 3,495万円
被告が中国から輸入・販売した生ウニを、原告が自分の飲食店で客に提供したところ、23人が腸炎ビブリオ菌による食中毒に罹患し、5日間の営業停止処分を受けた。
被害者に対する被害だけも、これだけの費用がかかります。
このリスクに対する保険=PL保険(生産物賠償保険)
PL保険とは、食品や商品、物品や修理品または請負作業などを、お客さまや依頼主に引き渡した後に、これらの製品の欠陥や仕事の結果によって事故が起こり、法律上の賠償責任を負われたときに保険金が受け取れる保険です。
汚染された食品(つまり、食品に欠陥ある)により、召し上がった方が食中毒(事故)が起こり、治療費などの損害が発生したため、被害者が食品の提供した企業に損害賠償を請求した。
② 休業による売上の減少
食中毒を起こしてしまうと、まず、営業停止処分を受け、営業自体できなくなるので、その期間中の売上はゼロになります。それに加え、都道府県や保健所が検査や指導が入ります。情報も都道府県のホームページや報道機関の報道により住民やお客様にも情報が広まってしまいます。そのため、営業再開後の売上は事故前より大きくダウンしてしまい、損害額は大変大きなものになります。
飲食店などの食料品を提供する業者にとって重要なことは、安全なものを提供できるかということです。食の安全が担保されている日本にいると忘れがちではありますが、一度でも食中毒を起こしてしまいますと、安全に対する信用は一瞬にして地に落ちてしまいます。そして、それまでの信頼を取り戻すのに倍以上の努力が必要になります。特にSNSの発展などにより情報の流動速度が高速な現代社会においては致命的になります。
このリスクに対する保険=食中毒利益保険
食中毒利益保険(食中毒・特定感染症利益保険)とは、お店で食中毒を起こしてしまったり、感染症が発症させてしまったりした場合の休業による逸失利益(利益の減少)を補償する保険です。保険会社によっては、PL保険の特約である場合もあります。
なお、オプションで、仮店舗などで営業を続けるために必要な費用を補償する営業継続保険金などもあります。
③ 既に市場に出回った商品を回収(リコール)する費用の発生
既に市場に商品が出回ってしまっている場合、さらなる被害者を出さないように迅速に商品を回収(リコール)しなければなりません。実は、食品に関するリコールはほぼ毎日多く実施されています。過去に多くの事例が。たとえば、以下のようなものです。
ヤマト リコールjpというサイトでは、日本で発生しているリコールの情報が閲覧できますので、参考にしてみてください。
特に、賞味期限・消費期限がある一定期間以上あり、大量生産・大量販売する場合は、リコールのリスクへの備えが必要です。なお、賞味期限・消費期限が短いものはリコールする前に期限が過ぎてしまうため、リコールを事実上はできないことが多いです。
このリスクに対する保険=リコール費用保険
リコール保険(特約)とは、リコールによって「回収にかかる費用」「代替品の仕入れ費用」「生産物の廃棄費用」などを補償する保険です。
保険によって、リコールが発生した際の対応についてのコンサルティングサービスが付いた保険もあります。このコンサルティングサービスを利用すると、どのように新聞に広告を打つべきか、どのように記者会見を行なうべきか、どのような業者を使って商品を回収すべきかなどのアドバイスがもらえたり、コールセンターの開設を手伝ってもらえたりします。
リコールを発生させてパニック状態の中で、いきなり記者会見をやらなければならないシチュエーションになることを想定して、ゾッとされた方はこのような保険に入っておくと安心かもしれませんね。
最後に
飲食店などの食品を扱われている方は日々細心の注意を払っていると思います。しかし、どんなに注意を払っていても起こり得るのが食中毒だと思います。そのような場面になって必要になるのが、このページで紹介した3つの保険です。万が一のリスクに備えて、保険への加入の検討をしていただければと思います。