ブラック企業 保険全般

(就活生向け)損害保険会社の社員はどんな仕事しているの?(ブラック企業?)

投稿日:2020年6月11日 更新日:

筆者は大手損害保険会社に10年間働いていました。就活生のために損害保険会社の社員の仕事について書きたいと思います。実際に働いていた際に感じていたことも含めて書きますので、参考にしていただければと思います。

おそらく一番気になるのは、ブラック企業かどうかかもしれませんので、最初にお伝えしますと、過去(10年前くらい)はブラック企業でしたが、今はそうでもないと思います。

 

損害保険会社のビジネスモデル

損害保険のビジネスの影響

損害保険は、個人や企業の活動に伴うリスクを補償することにより、その個人や企業の活動を支援することにあります。そのおかげで、新しいことに挑戦したり、新たな事業に取り組むことを促進するという点で社会に貢献しています。

損害保険で扱うリスクと契約方式

あらかじめ同意した事象が発生した場合に、その損害以内で金銭的に補償する契約を結ぶ形を採ります。つまり、保険会社が確率・統計論的に算出した保険料(掛け金)を徴収し、あらかじめ約定した事象が発生した際に、保険金(補償金)をお支払いする仕組みになっています。

損害保険では、火災、台風・水害・地震など自然災害、偶然な事故や賠償事故などのリスクを主に扱っています。損害保険で扱えるリスクは、「偶然で」、「突発的な」リスクです。このような日々変動するリスクを扱うため、基本的には長期契約を結ばず、1年の契約を更新する形で、基本掛け捨ての保険料を徴収するビジネスを行なっています。

損害保険会社の収入内訳

日本の損害保険業界の収入の内訳は、自動車保険(49.3%)、火災保険(13.8%)、自賠責保険(12.4%)になっています。(損害保険協会より引用)

自動運転や事故防止装置の発展いかんによっては、最大の収入分野の自動車保険のビジネスは将来的には、大きく変わる可能性を秘めています。

損害保険の代理店制度

損害保険は保険会社が直接顧客に保険を販売している訳ではありません。損害保険の代理店登録を行なった代理店が保険を販売する仕組み(損害保険代理店制度)を用いたビジネススキームになっています。自動車ディーラー、自動車整備(修理)工場、銀行などの代理店があるのは、皆さまもご存知かと思います。「プロ代理店」と呼ばれる保険業のみを行なう代理店や企業グループの従業員向けの保険を販売する「インハウス代理店」などもあります。

 

保険会社の社員の仕事

営業

前述の通り、損害保険は代理店制度を採っており、保険を顧客に販売するのは、代理店になります。したがって、保険会社の営業社員は、代理店への営業を行います。

損害保険代理店は、複数の保険会社の商品を扱えます。保険会社の営業社員は自社の商品を扱ってもらうために、代理店に対して商品の内容の勉強会を行なったり、交渉する営業を行ないます。家電量販店に家電を卸す家電メーカーのようなイメージの営業スタイルです。

代理店との関係は、上記の通りであるため、他業種の代理店制度とは異なり、代理店の方が力関係上は上になります。例えば、代理店との関係がうまくいっていないと、自社の商品を顧客に案内してもらえないこともあり、代理店に対して気を使わなければなりません。

代理店に接待したり、保険販売を手伝ったり、保険料の計算を委託されるなど、営業の割に雑務が多いのが保険会社の営業社員の仕事の特殊です。

事故対応

事故の対応の部署を「保険金サービスセンター(SC)」と言います。保険金サービスセンターの社員の仕事は、事故の案件を受付し、各種手続きをした上で、最終的に保険金をお支払いする流れになります。一人あたりだいたい10件〜20件程度の案件を同時に扱います。

現在基本的には、事故受付は24時間365日のコールセンターで受けるのが一般的です。コールセンターは契約社員や派遣社員が担当していることが多いです。コールセンターが受付した案件は社員に振り分けられ、担当者が決定します。

担当者は、保険内容や事故内容を確認した上で、保険契約者(被保険者)や相手方との間に入り、事故の解決に向けて交渉します。ほとんどの案件は1ヶ月半くらいで解決します。両者の交渉が難航した場合には、裁判や調停になることもあり、案件によっては長期化するものもあります。両者の交渉が成立すると、保険金請求書と呼ばれる書類を取り付けて、保険料を口座に振込んで、最終的に案件が終了します。

保険金サービスセンターの社員の仕事は、事故という極限状態にいる顧客を扱うため、ストレスの溜まる仕事であることは間違いありません。案件によっては、怒鳴られたり、長時間拘束されたりすることもあります。ただ、その一方で、困っている方を救済できる意義のある仕事でもあります。

内勤

人事や総務などの一般的な会社にある組織の他に様々な部署があります。まず、保険商品の開発や料率の算出を行なう部署、商品業務部があります。商品業務部では、新たな商品の開発やオーダーメイドの商品の料率の算出を行なったりします。

再保険を扱っている部署もあります。再保険とは自社では扱い切れないリスクを抱える場合に、海外の保険会社にそのリスクを受けてもらうこと言います。その再保険のために海外の保険会社と交渉するのを仕事にする部署があります。

全国の営業網やサービスセンター網を管理する部署であったり、システムを開発する部署など様々な部署が他にもあります。

現状と課題と将来性

日本の損害保険会社は近年再編を繰り返してきました。その結果、東京海上ホールディングス、MS&ADインシュランスグループホールディングス、SOMPOホールディングスの3つのメガ損保に再編され、一定落ち着いた状態になっています。強いて言えば、MS&ADインシュランスグループホールディングス内の三井住友海上とあいおいニッセイ同和が合併するのではないかと言われています。

収益面では、少子高齢化や若者の車離れ、自動運転化などによって、収益源の自動車保険のマーケットが収縮されることが予測されています。また、ネット型の保険や外資系保険会社・他業界の会社などの参入もあり、損害保険業界の競争は激化しています。

また、地震の増加や環境変化に伴う自然災害の増加により、収支が圧迫しています。ここ数年の災害により、積立金が減少しているため、今後数年の大きな災害があるか否かは、損害保険業界の将来に大きな影響を与えることが予測されます。

ここ数年の災害の影響もあり、システムの導入が遅れていると言われています。新システムの導入により、今後業務の自動化やAIの導入が促進され、人材が削減されることが予測されます。その中でも、SOMPOホールディングスは、大手介護会社を買収するなど介護事業に乗り出しています。余剰になった人材を介護事業に移行していくこと予測されます。

 

最後に

損害保険会社のビジネスや社員の仕事について、筆者の経験も基に書いてみました。繰り返しになりますが、読者の皆さまにとって、一番気になるのは、ブラック企業かどうかかもしれませんので、最初にお伝えしますと、過去(10年前くらい)はブラック企業でしたが、今はそうでもないと思います。

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