従業員が業務にケガをしたり、亡くなられた場合に、従業員本人や遺族が会社を相手に訴える可能性があります。このような労災により会社が訴えられた場合の賠償責任を補償する保険として、「使用者賠償責任保険」という保険があります。
近年の社会情勢の変化に伴い、「使用者賠償責任保険」のニーズは年々高まっており、加入者の数も増加傾向にあります。
このページでは、「使用者賠償責任保険」の必要性と補償内容について解説します。
「使用者賠償責任保険」の必要性
法律上の変化
2008年3月に労働契約法第5条に”安全配慮義務”が明文化されました。このことにより、企業は従業員が安全に仕事をできる場所を提供することが義務づけられました。また、企業は、従業員の安全のみならず、健康にまで気を配ることが必要になりました。
さらに、労災事故が発生し、従業員やその遺族から訴えられた場合に、企業側が安全配慮義務を遵守していたことを証明しない限り、この責任を免れることはできません。つまり、立証責任が企業側にあることが明確になったのです。
高額賠償事例
特に上記の法律の施行後、労災訴訟の賠償金は高額化しています。下表は最近20年間で、裁判で高額な賠償金の支払いが命じられたケースの一覧です。最大2億円近くの賠償金の支払請求が出ています。決して軽んじるべきではないリスクと言えるのではないでしょうか。
順位 | 業種 | 年 | 金額 |
1位 | 精密機器製造 | 2008年 | 1億9,800万円 |
2位 | 病院 | 2002年 | 1億3,500万円 |
3位 | 食品製造 | 2000年 | 1億1,000万円 |
社会的変化
インターネットの普及やSNSの浸透により、企業情報、特にブランドイメージを低下させるような情報はすぐに伝わるようになっております。企業側の対策は複雑化しています。
また、インターネットで弁護士事務所を検索できることもあり、以前に比べると容易に企業を訴えられる環境が生まれています。日本自体が以前と比較して訴訟社会に移り変わっています。
このような社会情勢を踏まえると、労災事故などの企業のブランドイメージを毀損しかねない事象は対策を講じる必要性が高まっています。
新型労災の流行
職場のストレスから精神的な疾患が発症するなどの「新型労災」というものが流行しております。長時間労働からうつ病を発症し、最終的には自殺をしてしまうなど過去にはなかった新たな労災事故が発生しております。
このような「新型労災」は、目に見えるような事故原因があるわけではないため、対策が難しいという特色があります。場合によっては、対策しようがないということがあります。
したがって、対策を講じても防ぎようのないリスクに関しては、保険に加入して補償してもらわなければなりません。
「使用者賠償責任保険」とは
従業員が業務上の災害によってケガをした場合やお亡くなりになった場合、労災認定されます。労災保険で補償されるのは、あくまでも、労働基準法部分の責任のみです。会社側の安全責任に問題があるとされれば、さらに民事上の賠償責任を負います。その賠償責任を補償する保険が「使用者賠償責任保険」です。
「使用者賠償責任保険」は、損害賠償金、弁護士の報酬や訴訟費用などの費用を補償します。
最後に
このベージでは、「使用者賠償責任保険」の必要性と補償内容について解説しました。業務災害が起きてしまったときに、被災した従業員には迅速かつ誠実な対応をすることが何よりも重要です。そしてそれが企業のブランドイメージの低下を抑え、企業防衛に繋がります。
今後も今以上に労働環境に関する企業への要請は高まっていくと予測されます。つまり、「使用者賠償責任保険」の必要性も高まっていくでしょうか。これを機会に一度、「使用者賠償責任保険」の加入をご検討いただければ幸いです。