実践知識(Knowledge)

Knowledge(実践知識)⑨ デジタル変革(DX/産業革命)

投稿日:2020年9月1日 更新日:


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日経TESTの5つの評価軸の1つのKnowledge(実践知識)では、ビジネスパーソンが課題解決のために必要な実践的な知識が身についてるかどうかを測る評価軸です。この評価軸でよく出題されるのが、「デジタル変革」です。このページでは「デジタル変革」についてよく出題される部分について解説していきます。

日経TESTに関しては、以下のリンク先をご確認ください。

 

デジタルトランスフォーメーション(DX)

2015年前後には、第4次産業革命という言葉が出てきたくらいデジタル変革は今後のビジネスにおいて重要なポイントになると言われています。

「DX(デジタルトランスフォーメーション)」は、2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱された概念。その内容は「進化し続けるテクノロジーが人々の生活を豊かにしていく」というものです。つまり、“進化したデジタル技術を浸透させることで人々の生活をより良いものへと変革すること”。を意味しています。

参考までに、経済産業省は以下のような定義づけをしています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

(出典)デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)Ver. 1.0

経済産業相は、このデジタルトランスフォーメーション(DX)によるビジネスモデルの変革が大きな経済効果をもたらす半面、企業が長期利用してきたITシステム(レガシーシステム)の改修を怠るなど手を拱いていると、2025年に約12兆円の経済損失をもたらすということを2018年に発表しました。これを「2025年の崖」と言います。

DXの事例

東京海上日動火災保険の自動車走行データ解析

 

第4次産業革命

過去3回の産業革命同様に、新しいタイプのものとして情報通信・医療・教育サービスなどの知識集約産業などにより産業革命が起こると言われており、これを第4次産業革命と呼んでいます。

まず、過去の産業革命を振り返ります。

第1次産業革命

18世紀半ばから19世紀にかけて起こった産業の変革と、それに伴う社会構造の変革を指して、「第1次産業革命」と言います。

当時のイギリスを中心に蒸気機関の開発により、工場製機械工業が設立しました。蒸気機関の活用により、鉄道や蒸気船の整備も進み「交通革命」ももたらしました。手作業が当然だった仕事が機械化したり、遠くまで効率的に人やモノを輸送できるようになったりし、社会が大きく変化しました。

第2次産業革命

1865年から1900年におきた、化学・電気・石油などのエネルギーなどの技術革新によりもたらされた、産業の変革を指しています。産業革命で工業が大きな躍進を遂げたイギリス、フランス、ドイツ、アメリカなどで技術革新により工業が進歩しました。

大きな特徴として、電力の導入により大量生産が可能となりました。工業用品だけでなく飲食料品や衣類などの製造も機械化が進み、消費財の大量生産の仕組みが確立されていきました。

第3次産業革命

20世紀半ばから後半にかけて、コンピュータの導入による自動化が進み、より効率的に量産が可能になりました。

この他には、1990年代以降のインターネットの登場と進化による「IT革命」などもあります。

これらの産業革命に続く形で実現すると言われているのが「第4次産業革命」です。次の産業革命では、人工知能(AI)、IoT、ロボットなどの技術にビッグデータなどの情報技術が組み合わさって起こると言われています。これにより更なる生産の効率化や製造業のサービス化が進みます。

 

インダストリー4.0(ドイツ)

第4次産業革命と同意義の言葉として「インダストリー4.0」があります。

インダストリー4.0とは、ドイツが世界で初めてIoTの普及を国家プロジェクトとして宣言したもので、ドイツ連邦教育科学省が勧奨し、ドイツ工学アカデミーにより2011年に発表されました。

インダストリアル・インターネット(米国)

現在世界中に分散している生産システム・産業用機器をインターネットでつなぐことにより、全体としての効率を飛躍的に拡大する取り組みを言います。アメリカで提唱されました。

これを推進するのはインダストリアルインターネットコンソーシアム(Industrial Internet Consortium)であり、ゼネラル・エレクトリック社、インテル社、シスコシステムズ社、IBM社、AT&T社の5社によって構成されています。

第4次産業革命の技術の中でもIoTの技術に重きをおいています。

 

Society 5.0(日本)

日本政府が2017年の経済財政運営の基本方針(骨太の方針)に盛り込まれた、第4次産業革命を活用した「超スマート社会」を意味する言葉です。

サイバー空間(仮想空間)フィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)を言います。単なる経済・産業の括りではなく、社会像を指す言葉です。

狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く社会ということで、Society 5.0と呼ばれます。

Society 5.0で実現する社会は、IoT(Internet of Things)で全ての人とモノがつながり、様々な知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出すことで、これらの課題や困難を克服します。また、人工知能(AI)により、必要な情報が必要な時に提供されるようになり、ロボットや自動走行車などの技術で、少子高齢化、地方の過疎化、貧富の格差などの課題が克服されます。

社会の変革(イノベーション)を通じて、これまでの閉塞感を打破し、希望の持てる社会、世代を超えて互いに尊重し合あえる社会、一人一人が快適で活躍できる社会となります。

この動きに追随する形で、経団連は2019年11月、全産業横断でデジタル革新を進める「デジタルトランスフォーメーション会議」を始動しました。

自動車やドローンを活用した宅配などを実用化するには、道路交通法や航空法などの法律や制度の整備が課題になっています。日本では限定的に規制を緩める「サンドボックス制度」(規制緩和を試す砂場を意味する)の運用も始まったが、体制の異なる中国にはスピード感で大きな差をつけられています。

 

科学技術予測調査

経済や社会を変えるかもしれない技術などの予測として政府が実施されるものです。1971年から始まり2019年11月で11回目の発表が実施されました。

Googleが2019年10月「量子超越」を実証したと発表した「量子コンピューター」について、実用的な数百量子ビットの性能のゲート型量子コンピューターが2035年ごろに使われ始めると予測しています。

「空飛ぶ車」は2033年に都市部に実現されると予測されています。

2029年人間を代替する農業ロボット
2030年ウナギなどの大規模な陸上養殖
2031年無人で自律航行する商船
2032年交換不要、低コストのEV用蓄電池
2033年都市部で人を運べる「空飛ぶ車」
2034年完全な自動運転(レベル5)
2035年実用的性能の量子コンピューター
2036年変換効率50%を超える太陽電池
2039年化石燃料を使わない航空機
2040年月や火星で宇宙基地の建設
2044年海水中からウランなどの希少金属回収
2048年宇宙太陽光発電
51年以降核融合発電
出典:日本経済新聞2019年11月2日付記事より抜粋

 

IoT(モノのインターネット)

IoT(アイオーティー)とは「モノのインターネット」のことで、スマートスピーカーやスマートホーム、自動運転車など、近年急速に実用化が進んでいる先端テクノロジーの1つ。

DX推進においても、AIやビッグデータなどと並ぶ重要なファクターの1つとして注目されています。

カテゴリーIoTの分野別活用事例
医療生体データをリアルタイムで医師に共有することで、
遠隔地から患者の健康状態のモニタリングが可能に
なり、在宅医療支援や医師不足の解消にも貢献。
物流自動搬送ロボットによるピッキング作業など、
倉庫業務の効率化。RFIDを利用したトレーサビリティ、
ドローンや無人運転車の活用による配送に代表される
物流革命(ロジスティック4.0)が起きています。
製造業生産ラインをIoT化することで、費用対効果を最適化。
設備機器の状態を可視化できるようにし、故障による
被害を防止が可能です。
農業日射量や土壌の状態をセンサーが感知し、水やり・肥料
の最適なタイミングや量を割り出します。
離れた場所からでもハウス内の温度調節・空調調節が可能。
交通高速道路の渋滞状況や電車の遅延状況がリアルタイム
でわかるため、最適なルートを選択して移動できます。

 

5G(ファイブジー)

第5世代の通信規格。IoT社会を支えるインフラになることを期待されています。米国や韓国では2019年に本格稼働し、日本2020年に開始されます。「高速」「低遅延」「多数同時接続」が可能になります。通信速度は4Gの最大で100倍になります。

実現が期待されること
・遠隔診療の円滑化
・事故現場の自動化
・自動運転

セキュリティー面で懸念があり、サイバーテロ対策などが課題になっています。

MaaS

MaaS(マース)とは、Mobility as a Serviceの頭文字を取ったものです。バス、電車、タクシーからライドシェア、シェアサイクルといったあらゆる公共交通機関を、ITを用いてシームレスに結びつけ、人々が効率よく、かつ便利に使えるようにするシステムなどを指します。

MaaSは北欧フィンランドで生まれました。「MaaSの父」と呼ばれるサンポ・ヒエタネン氏が2006年に発案したアイデアをベースにしており、2014年に概念を発表しました。

トヨタ静岡県裾野市にスマートシティを建設
東急JR東日本などと伊豆半島で次世代移動サービスの実証実験
ブリヂストン車両移動管理を行なうオランダ企業を2019年に買収

 

GAFA

以下4社の米国のIT企業の頭文字を取って、GAFAと呼びます。

【G:Google(グーグル)】
検索エンジン「Google」、オンライン広告、オンラインストレージ「Google ドライブ」、スマホOS「Android」やスマートフォン「Google Pixel」の開発などで知られる米国の多国籍企業です。設立1998年です。

【A:Apple(アップル)】
「Mac」「iPhone」「iPad」「iPod」などのハードウェアや「macOS」「iOS」などのOSやアプリケーションの開発にとどまらず、クラウドサービス「iCloud」やダウンロードサービス「App Store」、コンテンツ配信サービス「iTunes Store」、映画製作までを手がけるIT企業。創業は1976年です。

【F:Facebook(フェイスブック)】
世界最大級のSNS「Facebook」とスマホ版メッセージアプリ「Messenger(メッセンジャー)」を運営。設立は2004年です。

【A:Amazon(アマゾン)】
世界最大のECサイト「Amazon」を運営するほか、映画や音楽などのコンテンツ配信や電子書籍リーダー「Kindle」やスマートスピーカー「Amazon Echo(アマゾン エコー)」の製造・販売、AIアシスタント「Amazon Alexa(アマゾン アレクサ)」の開発、クラウドサービス「Amazon Drive」の運営などを行う企業。創業は1994年です。

これらの企業は、インターネット上で商品やサービス、情報を提供する環境、いわゆる「プラットフォーム」を形成しており、プラットフォーマーと呼ばれます。

GAFAに対する規制

2019年7月米司法省は、プラットフォーマー企業に対する反トラスト法(独占禁止法)違反の調査に乗り出しました。

 

SaaS

「SaaS」(Software as a Service:「サース」または「サーズ」)とは、ソフトウェアを利用者(クライアント)側に導入するのではなく、提供者(サーバー)側で稼働しているソフトウェアを、インターネット等のネットワーク経由で、利用者がサービスとして利用する状況を指します。必要な機能を必要な分だけサービスとして利用できるようにします。

脱押印

2020年のコロナ渦で問題と指摘されたのが、ハンコを押すために出社するなど押印がテレワークの阻害要因となっている点です。日本では過去より正式な書類の証明を捺印で行なってきました。そのため、必然的に紙が必要になります。

菅政権は2021年、官民手続きのオンライン化に向けて踏み出すと言っています。押印や対面規制を撤廃・縮小する法整備に取り組み、省庁や医療、民間取引での規制の壁を壊します。利用者が恩恵を実感する年になるかどうかはデジタル改革の推進力にかかっています。

「本人確認にならない認め印は全て廃止になる」と河野太郎規制改革相は20年11月に、民間からの申請など行政手続きの認め印を全廃すると表明しました。およそ1万5000種類の手続きのうち実印などを求める83を除いてハンコが不要になります。住民票の写しの交付請求や婚姻・離婚届、給与所得者の扶養控除(年末調整)や自動車の継続検査(車検)などの手続きでハンコを使うことがなくなる予定です。

一方で会社設立などの商業・法人登記や不動産登記の申請、自動車の登録などの手続きは引き続きハンコが必要と言っています。

河野氏は官民手続きに関して、❶押印廃止、❷書面・対面の撤廃、❸常駐・専任義務の廃止、❹支払いのデジタル化――を順次進める予定です。政令などや規則改正で済むものは随時変えていき、法改正が必要なものは1月召集の通常国会に一括法案を出し成立をめざします。

対面規制(脱対面)

法令などで人と人との対面でのやりとりを求める規制のことを「対面規制」と言います。不動産取引の重要事項説明産業医・薬剤師の常駐義務などがあります。

対象には安全や消費者保護を主眼としたものが多いです。一方で技術の進歩で対面する意味合いが薄れてきた分野もあります。

政府は官民のデジタル化によって生産性を上げるため、対面規制の撤廃に動きます。新型コロナウイルスの感染防止で人と人の接触を減らす必要性が高まり、取り組みが加速しました。

菅義偉首相は「対面」「押印」「書面撤廃規制改革の3本柱とする。

人口が減り、人手不足が深刻な日本で効果は大きいと考えられています。河野太郎規制改革相は「人がやらなくていいものは人工知能(AI)やロボットに置き換え、必要なところに人手をかける」と語っています。

出典)日経新聞

 

リスキリング

リスキリング」とは、働き手のキャリアの自律性が求められるなか、注目を集めるのが学び直すことを言います。

似た概念に「リカレント教育」があるが、リカレントが通常、キャリアを中断して大学などに入り直すことを意味するのに対して、リスキリングは仕事を続けながら自身のスキルを継続的にアップデートしていくことを指す。特にデジタルトランスフォーメーション(DX)の急速な進展に合わせた実践的な職業訓練を意味することが多くなっています。

経団連は20年11月に発表した新成長戦略に、DXに伴い社内で生まれる業務に人材を円滑に異動させるため、リスキリングが必要になるとの文言を盛り込みました。日立製作所は20年から国内全従業員を対象に、データ分析のノウハウなどを習得するためのカリキュラム提供を始めています。

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