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化学物質に関して、有害性が判明した後に対処するだけでなく、❶新規化学物質について、製造・輸入の段階で簡易な有害性の調査を事業者に義務付け、❷がん等の重度の健康障害を生ずるおそれのある化学物質について、特別な有害性の調査の指示ができる規定を設けています。このページでは、新規化学物質の有害性の調査等について解説します。
新規化学物質の有害性の調査(57条の3)
①有害性の調査と届出(57条の3①、令18の4)
新規化学物質を製造し、又は輸入しようとする事業者は、あらかじめ、厚生労働大臣の定める基準に従って有害性の調査を行ない、当該新規化学物質の名称、有害性の調査の結果その他の事項を厚生労働大臣に届け出なければなりません。
(57条の3①)
事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、第五十七条第一項の政令で定める物及び通知対象物による危険性又は有害性等を調査しなければならない。
2 事業者は、前項の調査の結果に基づいて、この法律又はこれに基づく命令の規定による措置を講ずるほか、労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を講ずるように努めなければならない。
【例外】有害性の調査が不要なケース |
以下の①〜③の確認を受けた際に調査が免除されます ①労働者が新規化学物質にさらされるおそれがない旨の厚生労働大臣の 確認を受けたとき ②有害性のない厚生労働大臣の確認を受けたとき ③一の事業所における1年間の製造量又は輸入量が100キログラム以下 である旨の厚生労働大臣の確認(この確認の有効期間は2年)を受けた 場合に、新規化学物質を製造し、又は輸入しようとするとき ※新規化学物質を製造・輸入する日の30日前までに届出が必要です |
④試験研究のため製造し、又は輸入しようとするとき ⑤新規化学物質が主として一般消費者の生活の用に供される製品として 輸入されるとき |
②名称の公表(57条の3③、則34の14)
厚生労働大臣は、有害性の調査の結果等の届出があった場合には、当該新規化学物質の名称を、1年以内に、かつ、「3ヶ月以内ごとに1回、定期に、官報に掲載すること」により公表します。なお、届出を行なえば、名称の公表前であっても当該新規化学物質を製造し、又は輸入することができます。
(57条の3③)
3 厚生労働大臣は、第二十八条第一項及び第三項に定めるもののほか、前二項の措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとする。
③有害性の調査の事後措置(57条の3②④)
❶有害性の調査を行った事業者は、調査の結果に基づいて、新規化学物質による労働者の健康障害を防止するため必要な措置を速やかに講じなければなりません。
❷厚生労働大臣は、有害性の調査の結果について学識経験者の意見を聴き、労働者の健康障害を防止するため必要があると認めるときは、届出をした事業者に対し、施設・設備の設置・整備、保護具の備付け等の措置を講ずべきことを勧告するすることができます。
❸厚生労働大臣は、上記❷の学識経験者の意見を聴いたときは、その内容を新規化学物質の名称の公表後1年以内に、労働政策審査会に報告するものとされています。(則34の17)
新規化学物質を製造し、又は輸入しようとする事業者は、あらかじめ、厚生労働大臣の定める基準に従って有害性の調査を行ない、当該新規化学物質の名称、有害性の調査の結果その他の事項を厚生労働大臣に届け出なければなりません。
(57条の3②,④)
2 事業者は、前項の調査の結果に基づいて、この法律又はこれに基づく命令の規定による措置を講ずるほか、労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を講ずるように努めなければならない。
4 厚生労働大臣は、前項の指針に従い、事業者又はその団体に対し、必要な指導、援助等を行うことができる。
(平二六法八二・追加)
まとめ
事業者 | (製造・輸入の際) 新規化学物質の有害性の調査 | 実施後速やかに 健康障害防止措置 |
⇩届出 | 名称・結果 | |
厚生労働大臣 | ❶官報による名称の公表 (1年以内に3ヶ月以内毎に1回) ❷学識経験者からの意見聴取 ❸勧告(必要と認めるとき) | |
⇩報告 | ❷の内容 | |
労働政策審議会 |
特別の有害性の調査の指示(57条の4)
厚生労働大臣は、必要があると認めるときは、がんその他の重度の健康障害を労働者に生ずるおそれのある化学物質を製造し、輸入し、又は使用している(したことがある)事業者に対し、学識経験者の意見を聴いた上で、特別な有害性の調査を行ない、その結果を報告することを指示することができます。
(57条の4)
化学物質による労働者の健康障害を防止するため、既存の化学物質として政令で定める化学物質(第三項の規定によりその名称が公表された化学物質を含む。)以外の化学物質(以下この条において「新規化学物質」という。)を製造し、又は輸入しようとする事業者は、あらかじめ、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣の定める基準に従つて有害性の調査(当該新規化学物質が労働者の健康に与える影響についての調査をいう。以下この条において同じ。)を行い、当該新規化学物質の名称、有害性の調査の結果その他の事項を厚生労働大臣に届け出なければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときその他政令で定める場合は、この限りでない。
一 当該新規化学物質に関し、厚生労働省令で定めるところにより、当該新規化学物質について予定されている製造又は取扱いの方法等からみて労働者が当該新規化学物質にさらされるおそれがない旨の厚生労働大臣の確認を受けたとき。
二 当該新規化学物質に関し、厚生労働省令で定めるところにより、既に得られている知見等に基づき厚生労働省令で定める有害性がない旨の厚生労働大臣の確認を受けたとき。
三 当該新規化学物質を試験研究のため製造し、又は輸入しようとするとき。
四 当該新規化学物質が主として一般消費者の生活の用に供される製品(当該新規化学物質を含有する製品を含む。)として輸入される場合で、厚生労働省令で定めるとき。
2 有害性の調査を行つた事業者は、その結果に基づいて、当該新規化学物質による労働者の健康障害を防止するため必要な措置を速やかに講じなければならない。
3 厚生労働大臣は、第一項の規定による届出があつた場合(同項第二号の規定による確認をした場合を含む。)には、厚生労働省令で定めるところにより、当該新規化学物質の名称を公表するものとする。
4 厚生労働大臣は、第一項の規定による届出があつた場合には、厚生労働省令で定めるところにより、有害性の調査の結果について学識経験者の意見を聴き、当該届出に係る化学物質による労働者の健康障害を防止するため必要があると認めるときは、届出をした事業者に対し、施設又は設備の設置又は整備、保護具の備付けその他の措置を講ずべきことを勧告することができる。
5 前項の規定により有害性の調査の結果について意見を求められた学識経験者は、当該有害性の調査の結果に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。ただし、労働者の健康障害を防止するためやむを得ないときは、この限りでない。
(昭五二法七六・追加、昭六三法三七・一部改正、平一一法四五・旧第五十七条の二繰下、平一一法一六〇・一部改正、平二六法八二・旧第五十七条の三繰下・一部改正)
※特別な有害性の調査とは:
化学物質が労働者の健康障害に及ぼす影響についての調査を言います。
具体的には、実験動物を用いた吸入投与、経口投与等の方法により行う
がん原性の調査があります。