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Knowledge(実践知識)20 農産物(小麦)

投稿日:2020年9月12日 更新日:


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日経TESTの5つの評価軸の1つのKnowledge(実践知識)では、ビジネスパーソンが課題解決のために必要な実践的な知識が身についてるかどうかを測る評価軸です。この評価軸でよく出題されるのが、「農産物(小麦)」です。このページでは「農産物(小麦)」についてよく出題される部分について解説していきます。

日経TESTに関しては、以下のリンク先をご確認ください。

 

農産物の生産・消費・流通

生産量と消費量で見る世界の小麦事情

資料 : 日本のデータは平成26年度「食料需給表」より、その他の国・地域は米国農務省「PS&D」(10 November 2015、2014/15年の数値〈見込値を含む〉)より作成
※注 : 日本の「1人当たり消費量」は供給純食料の値を総人口で割って算出、その他の国・地域は「消費量」を国際連合「World Population Prospects:The 2015 Revision」(2015年7月1日推定値)の人口で割って算出、「EU」は加盟28カ国の合計

小麦は、成育期に冷涼で湿潤、成熟期は温暖で乾燥する気候で生産されます。特にロシアやウクライナの黒土地帯、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどの国では大規模な企業的穀物・畑作農業が行われ、安い生産コストで生産し、輸出地帯になっています。

米国農務省によると、現在、生産量・消費量の1位はEU諸国ですが、国別では、中国とインドがトップクラス。両国は、生産した小麦をほぼ自国で消費しているという共通点があります。

今後、新興国等の人口は大幅な増加が見込まれており、2024年には、中国とインドが世界の人口の35%を占めると予測されています。それに伴い、両国の小麦の消費量も増加が見込まれています。

また、近年、急速に生産量を拡大させているのがロシアです。10年前に比べて30%増加し、2014年度には、それまで国別では3位だったアメリカをしのぎ、中国とインドに次ぐ生産国となりました。一方、日本は小麦の約9割を輸入に依存していますが、近年では国産小麦のニーズが高まってきています。

世界の小麦生産量・消費量ランキング

資料 : 日本のデータは平成26年度「食料需給表」より、その他の国・地域は米国農務省「PS&D」(10 November 2015、2014/15年の数値〈見込値を含む〉)より作成

 

 

日本の小麦生産状況

我が国の麦栽培は今、大きな転換期を迎えています。品種改良が進んだことで、一大産地である北海道を筆頭に、大幅に品質が向上。需要に合わせた新品種が増えています。

全国の生産量上位10品種

資料 : 農林水産省「平成26年産麦の農産物検査結果(確定値)」(平成27年4月30日現在)

日本では、麦の生産量のほとんどは北海道です。次いで、水田の裏作として麦が栽培されてきた九州、関東の順で生産量が多くなっています。

もともと、国産小麦はうどんなどに適した中力系の品種が多く、パンに適したたんぱく質含有量の多い強力系は作りにくいとされてきました。ところが、ここ数年で品種改良が進み、北海道から超強力系「ゆめちから」が登場しました。これが評価されたことで、パン用の国産小麦の需要が急増し、九州でも強力系の「ミナミノカオリ」の作付面積が増えています。

また、単収の多い品種も注目されています。北海道では「ホクシン」から「きたほなみ」へ、関東では「農林61号」から「さとのそら」へと切り替えが進みました。さらに、平成27年産では山口県で「ニシノカオリ」から「せときらら」へと切り替えられています。国産麦は今、新品種が次なる時代を切り開こうとしています。

根強い国産志向がある日本の消費者
日本人1人当たりの小麦の年間消費量は、米が約55キログラムであるのに対し、小麦は30キログラム強。そのうち国産は1~2割程度です。パンや麺など、私たちがさまざまな形で口にしているものの多くは、外国産なのです。

このような現状がありながら、「最近は国産麦への注目度が高まっていると感じている人が、多いのではないでしょうか」と話すのは、我が国の麦の状況をよく知る、農林水産政策研究所の吉田行郷総括上席研究官。それを裏付けるように、研究室の棚には、国産麦を使った商品がずらりと並んでいます。

「こうした商品が増えていることからも、国産への注目度が一層高まっていることがうかがえます」と笑顔で語ります。

「もともと、日本の消費者には根強い”国産志向”があると言われていますが、国産であっても、おいしくなければ売れません。原料となる麦の品質の向上に加えて、メーカー側も国産麦の特性をいかした商品を研究・開発し、製造できるようになったことが大きいと言えます」

世界食料危機をきっかけに復活していった国産小麦
かつては外国産に劣ると言われてきた日本の小麦。第二次世界大戦後、欧米型の食文化が普及する中で、パンやパスタには外国産小麦のほうが向いていることから、国産の需要がなくなり、生産も一気に落ち込みました。

そうした状況が一変したのは、1972年の世界食料危機がきっかけとなりました。

「当時、当たり前のように売られていた豆腐がスーパーの店頭からごっそり消えるなど、大騒ぎになったことを思い出す方もいらっしゃるのではないでしょうか。これを契機に、食料供給力をもっと強化しようと、生産の拡大はもとより、需要に見合った小麦の品種改良に本腰を入れたのです」

栽培技術の向上にも取り組みながら、ようやく新品種が市場に出てきたのは、2000年以降になってから。その後、改良は進み、現在の北海道では、15年前に栽培されていた品種から、より質の高いものに大きく入れ替わりました。特に「ゆめちから」や「きたほなみ」は、大手メーカーの求めにも対応できる品質や量の生産がされるようになり、国産小麦の普及促進に貢献しています。

国産小麦は、将来的に品質がますます向上し、生産量・消費量が順調に増えていくと考えられています。

新しい品種への転換や導入を急ぎすぎると、需要に見合った量以上に生産されてしまうことがあります。逆に、需要があるのに生産が追いつかないと価格の高騰を招き、供給の機会を失ってしまうことも。ですから、常に需要を細やかに見極めながら、生産を拡大していくことが最良の策であると考えています。

そして、消費者に国産小麦の魅力をもっと知ってもらうため、吉田研究官が提案するのは、外国産小麦のパンと食べ比べてみることです。「最近、パン屋さんの店頭でも、国産と外国産、2種類の食パンやバゲットが売られているところをよく見かけます。シンプルなパンで同時に味を比較してみると、『こんなに味が違うんだ』という発見があるはずです。もちもち感やしっとり感といった、国産小麦ならではのおいしさを味わってほしいですね」

一方で、昨今の健康ブームを受け、国産大麦の需要も拡大。ご飯と一緒に炊く雑穀や、朝食向けのグラノーラ、カフェインを含まない麦茶など、健康に気をつかう人向けの商品だからこそ、国産のものが人気を集めています。

「品種改良も進んでおり、『サチホゴールデン』『はるしずく』(二条大麦)、『カシマゴール』(六条大麦)、『トヨノカゼ』『ビューファイバー』(はだか麦)などが新たに登場。従来の大麦の色のイメージを払拭する美しい白さと粒の大きさが特徴の新品種『ファイバースノウ』も話題を呼んでいます」

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